
短い梅雨も早々に明けて、近年にないほどの猛暑が続く夏の日、夏バテ解消を切実に願いつつ料理研究家・臼居芳美先生のお宅を訪れました。今回のレシピは和豚もちぶたのひき肉をたっぷり使った「坦々麺」。日本でも人気の四川料理メニューの一つです。
「坦々麺」をネットで調べるとたくさんのレシピが出てきます。お好みで多彩なアレンジがしやすいのが「坦々麺」。最近では「坦々麺」専門のお店も多いですね。
では本当の坦々麺ってどんなものだろう、と疑問をもったスタッフ。たくさんのスパイス・調味料が並べられたキッチンに入るなり、先生に質問してみました。
アレンジ自在の本格四川「坦々麺」の基本レシピ

中国の麺料理はもともと「汁なし麺」「まぜそば」タイプがほとんどなのだそうです。「坦々麺」も同様で、ごまだれとひき肉の「肉みそ」を使ってピリ辛に仕上げるところは共通ですが、濃厚なゴマだれをそのまま麺にからめて食べるところが特徴。日本の温かいスープでいただく「坦々麺」は、日本に紹介されたときにアレンジされたスタイルです。
もうひとつの特徴は「花椒」を効かせること。中国原産のスパイスの一種「ファージャオ」をたっぷりからめていただきます。日本でウナギなどにかける「山椒」とは異なり、しびれるような辛さと芳醇な香りが特徴です。

今回は、本場四川スタイルの「汁なし」タイプ坦々麺と、日本でおなじみのスープでいただく坦々麺の2種類を作ります。

まずは「坦々麺」基本のレシピから。「汁なし」の「冷」タイプも、温かいスープで食べる「温」タイプも、材料・味付けは共通。
坦々麺のたれは何と言っても調味料の多さが特徴。といってもスーパーなどでも買えるものがほとんどです。
調味料は二つのグループに分かれています。ひとつはもちろん麺と絡めるごまだれ用。もうひとつはひき肉を炒めるときの味付け用です。
いっぽう調理法はいたってシンプル。ということは、調味料さえしっかり揃えてしまえば、どなたでも簡単に本格坦々麺を作ることができますよ^^

肉みそを作る
まずは味と歯ごたえのポイント「肉みそ」から作っていきます。
1. 玉ねぎをみじん切りにしておきます。
2. 和豚もちぶたひき肉を強火で炒めます。
3. ひき肉がぽろぽろして焼き色がついてきたら、玉ねぎ・おろし生姜・おろしにんにくを加えてさらに炒めます。

4. 香りが立ったら調味料と水を入れます。途中に軽くアクをとりながら、汁けがなくなるまで煮詰めます。
5. 汁が1/4程度になったら、今回は水溶き片栗粉を少量加え、ひき肉が散らばらないように軽くまとめます。

ここまで仕上げた「肉みそ」は、以前このシリーズで作ったひき肉のそぼろと見た目はそっくりですが、今回は完全な中華の味わいです。

ゴマだれを作る
つづいては、麺に絡めるゴマだれを作ります。

すりごまと練りゴマをベースに、ラー油・豆板醤・オイスターソース・砂糖ほか、多くの調味料を合わせていきます。

1.材料をすべてボウルに入れたら混ぜ合わせます。
2.ここに水か豆乳を加え、さらに混ぜておきます。

最後に「花椒」を加えます。パウダー状のものならそのまま、粒状のものはミルなどで細かくしてから加えてください。
たくさんの調味料・スパイスひとつひとつが、どれも欠かせない味の要素。味見をすると、すでに「中華の香り」が完成していました!
お好みで長ネギのみじん切りを加えてもおいしいですよ♪

ここまでが、今回の先生のレシピの「基本」と考えます。我が家流のアレンジをするときは、この手順・材料・風味を踏まえたうえで考えるとよいでしょう。
肉みそとゴマだれができあがったら、いよいよ仕上げ。麺と付け合わせを用意していきます。
この麺をそのままゴマだれに絡めていただくのが「冷」タイプ。
ゴマだれに水きりした麺を投入したら、よく絡めていきます。
濃厚なゴマだれが絡んだ太麺は、堂々の迫力!!

ここに肉みそをのせ、ラー油をふりかけ、つけあわせに細切りのきゅうりを添えたら、涼しげな汁なし坦々麺ができあがりです。

いっぽう、軽く塩味を効かせたスープでのばしたゴマだれでいただくのが「温」タイプとなります。
深めの器にゴマだれを入れたら、中華スープの素と塩適量を足した温かいスープでのばします。スープ・塩味の分量はお好みで調整してください。

あとはラーメンの要領で麺を入れ、肉みそをたっぷりトッピングします。
こちらも最後にラー油をふりかけたら、見慣れた坦々麺らしい姿になりました。青菜や豆乳などをトッピングするのもお勧めです。
さらに刺激を求める方は、最後にまた「花椒」をトッピングするのもいいですね。
暑さを吹き飛ばすおいしさは「立体構造」試食とアレンジ

「冷」「温」ふたつの坦々麺ができあがりました。
さっそく温かいほうの坦々麺から試食開始。

スープを飲んだ瞬間に感じるのは、まずはゴマの香ばしい香り、その後にほんのりとした甘みがきます。
和豚もちぶたの旨みと太麺をかみしめていると、それを追いかけるようにピリリとした花椒の辛み、ラー油の辛みが登場します。
時間差でいろいろな味わいが楽しめる、全体的にはマイルドな印象の坦々麺です。

つづいて冷たい方の「汁なし」タイプを試食。
肉みそとゴマだれがしっかり絡んだ麺を口にしたとたん、まずは濃厚なゴマ風味にノックアウトされました!
そして間髪をいれず、花椒の芳醇な辛みと香りに追撃されます(笑)辛みが通り過ぎた後は、日本の山椒にも似た奥深い香りが・・・。
「冷」タイプも「温」タイプも、香り・辛さ・甘み・旨みが見事に組み立てられていて、立体的ともいえる四川のおいしさがありました。
そして、濃厚なゴマだれと、中華の香りの凝縮した肉みそを、麺だけで食べるのはもったいない!・・ということで。
今回の「スピンオフ」レシピとして(笑)、肉みそを夏らしい食材にあわせてアレンジ。

坦々茄子麺
旬の茄子のヘタをとり電子レンジで加熱したものを氷水で冷やし、細く切ったら、麺に見たててゴマだれをかけ、肉みそをトッピングします。
とろりとしたゆで茄子にゴマたれ・肉みその風味が絡んで、間違いないおいしさです。

坦々豆腐
細切りのきゅうりに冷えた豆腐をのせ、こちらもゴマだれ、肉みそと合わせます。
冷ややっことは全く違う豆腐のおいしさが楽しめます。

保存版肉みそ
さらに様々な食材とあわせて楽しめる楽しめる肉みそは、多めに作って冷蔵庫で保存しておくと、2~3日は大活躍しそうです♪
保存する場合は、よく煮詰めて汁けを少なめにしておきましょう。

ゴマ風味を楽しむレシピは日本にもいろいろありますが、四川料理「坦々麺」のいちばんの特徴は何といっても「花椒」の辛みと香り。
唐辛子と同様、麻婆豆腐の辛さに欠かせない「花椒」は、中国では漢方薬としても重宝されているのです。
精神安定・鎮痛効果をはじめさまざまな効果があるとされ、しびれるような辛さは、古代ではなんと麻酔に使われることもあったとか。
さらに殺菌効果やホルモンのバランスを整える効果もあるとされており、まさに酷暑が続くこの時期にはありがたいスパイスです。

冷やして食べる坦々麺も、あえて温かくして食べる坦々麺も、やはり「医食同源」に基づくすぐれたレシピと言えそうです。
食欲がなくなりがちなこの時期、ぜひご家庭で我が家流「坦々麺」を楽しんで、暑さを乗り切ってくださいね。
分量のおさらい
肉みそ(4人分)
- 豚ひき肉・・・200g
- 玉ねぎ・・・1/2個
- おろしにんにく・おろし生姜・・・各小さじ1
- 水・・・200ml
- 甜麺醤・・・大さじ2
- 酒・醤油・砂糖・・・各大さじ1
- 水溶き片栗粉・・・片栗粉大さじ1+水大さじ2
ゴマだれ
- ラー油・・・大さじ2
- ゴマ油・・・大さじ1
- 白すりゴマ・練りゴマ・・・各大さじ3
- 醤油・砂糖・鶏がらスープの素・・・各大さじ1
- オイスターソース・酢・・・各小さじ1
- 豆板醤・・・小さじ1
- 花椒・・・小さじ1
- (お好みで)長ネギみじん切り・・・10cm分
- 水または豆乳・・・100ml