やっと秋晴れがつづくようになったと思ったら、もう北国からは冬の便り。そんなあわただしい晩秋の11月某日、料理研究家・臼居芳美先生のご自宅を訪れました。
今回のレシピは、和豚もちぶた入り肉まん&ニラまん。
栃木県産和豚もちぶたのひき肉と組み合わせて、地産地消の点心レシピを伝授いただきます。
本格点心 肉まん・ニラまん栃木県産にこだわった地産地消レシピ
「点心」とは、中国でおやつ・軽食の意味。米が食べられない地方では主食としても食べられます。特定の地方の料理名というわけではなく、中国全土で呼ばれる名前です。
日本でメジャーな点心としては、今回の肉まんやシュウマイ、小籠包など。その他にもスイーツのようなものまで多種多彩です。
日本で中華まんがよく食べられるのは寒い時期。毎年秋が深まってくると一斉にコンビニの店頭に並ぶので、季節の風物詩にもなっていますね^^ コンビニのおかげで肉まんが中華料理なのはわかっていましたが、ニラまんのほうは、スーパーで売っている日本のお惣菜と思っていたスタッフ。「ニラまんも点心よ」と先生に教えられ、慌てて検索。 本格中華料理店の飲茶のコースにもちゃんと取り入れられている、中華点心なのでした。
ニラは栃木県の特産品。とくに餃子の街・宇都宮市民にはなじみの深いスタミナ野菜です。いろいろな料理に使えて栄養価も高いので、先生曰く、ニラ料理はもっと注目されていいはず。ぜひ広めていきたい、とのことです。
肉まんもニラまんも、調味料や材料は比較的シンプルです。ひき肉・玉ねぎ・しいたけ・中華スープの素・醤油・ごま油などなど。
事前にいただいたレシピ表を見て意外だったのは、味付けだけでなく肉まんの皮にも砂糖が入ること。
中華まんを食べたとき、とくに甘みを感じたことはありませんでしたが、皮のふっくらやさしい風味とつやは、砂糖のおかげなのでしょうか。
今回、和豚もちぶたのひき肉はあわせて450g用意しました。適度に脂身が混ざっておいしそうです。
これからお肉を使って、肉まんを8個・ニラまんを16個作っていきます。
肉まんを作る
具を作り、皮に包んで加熱するという手順は肉まんもニラまんも同様です。
まずは、肉まんのレシピから。
肉まんの皮を作る
中華まんの皮は、強力粉・薄力粉の両方を混ぜるところがポイント。それにドライイーストとベーキングパウダーを加えることころも特徴的です。短時間でも素早く生地が膨らむのです。
イースト菌は「砂糖を食べる」という言い方をするそうです。砂糖を加えると発酵しやすくなるのです。
そして、逆に発酵を抑えてしまうのが、塩。
なのでボウルに加えるときには、イースト菌の近くに砂糖を置き、ボウルの反対側に塩を入れておくようにします。混ぜてしまうのでいずれ一緒になるのですが、それまでの間のちょっとした気遣いでしょうか^^
サラダオイルと塩少々、そこにぬるま湯を加えます。イースト菌は60度を超えると発酵しなくなるので、ぬるま湯は35度程度の人肌にしておきます。
皮の材料がボウルにはいったら、手でこねていきます。生地をこねるとき、ボウルや手の表面に凹凸があると粉のダマがこびりつくので、こねながらキレイにしていきましょう。
ホームベーカリーでこねてもOK。材料を入れるだけです。様子を見ながら、まとまったら止めましょう。
生地全体がなめらかにまとまればOKです。この状態で軽くラップをかけて15分ほどねかせます。
夏は暖かいので室温で十分ですが、冬はストーブの近くなど、なるべく温かいところに置きましょう。ただコタツの中などはちょっと温度が高すぎるかもしれません。高くても40度程度までが適温です。
肉まんの具を作る
生地をねかせている間に、肉まんの具を作っていきます。
玉ねぎ・シイタケをみじん切りにします。
石づきの部分もだしがでるのでみじん切りにして使いましょう。
醤油が大さじ1、砂糖が大さじ1/2、片栗粉が大さじ1/2などなど。甘辛の味付けです。
シイタケのみじん切り
肉厚なシイタケはいきなり縦方向に切らず、最初に横方向に薄切りにするときれいなみじん切りになります。
肉に全ての材料を加えたらこねていきます。体温で脂が適度に溶けるので、こねるときは手でこねましょう。
粘りがでるまでよくこねると、しっとりとした食感の具に仕上がります。
つづいて、こねあがった具をおおまかに8等分にしておきます。
1つずつ丸めておくことで、皮に包むときに迷わずすむのです。
きれいな肉団子が8個できました。
肉まんの具をつつむ
寝かせておいた肉まんの皮がいいぐあいに膨らんできました。十分発酵した皮は、うらやましいくらいに(笑)ハリとツヤがあります。
このへんで蒸し器のお湯を沸騰させておきます。
肉まんの皮をおおよそ8等分します。均等に分けるために、今回は念のためハカリを使いました。あとで丸めるので、細かくちぎって調整してもOKです。
生地を分けたら、丸くまとめておくときれいに伸ばせます。
丸めた生地を伸ばしていきます。
打ち粉は強力粉。綿棒で、真ん中が厚く、端が薄くなるように生地を伸ばしていきます。
端は包んだ時のとじ目が重なるところなので、薄くしておくと、全体が均等な厚みになるのです。丸めた生地を軽くつぶして平らにし、周辺だけを綿棒で伸ばすようにするとうまくいきますよ。
伸ばした生地の真ん中に具を置いて、端の部分をひだのように伸ばして閉じていきます。
このとき閉じた面を軽くつまんで上にすると、見慣れた「中華まん」の形になってきました!
閉じるときは具に触れないように
手に具の脂分がつくと閉じにくくなるので注意!閉じるときは具をさわらないようにしてください。ただし、少しくらい中身がでていても、先生曰くそれは手作りの魅力。出来上がりはおいしいのであまり気にしないでくださいね^^
肉まんを蒸す
蒸し器のお湯はしっかり沸騰させておきます。
四角く切ったオーブンシートを蒸し台に敷いておき、その上に丸めた肉まんを置き、中火で20分蒸します。
生地を寝かせるのに15分~20分。その間に材料を用意して、蒸すのに20分。40分もあれば、ホカホカの本格肉まんが出来上がります。
蒸し器のフタは手ぬぐいなどの布で包み、水気が肉まんにかからないようにしておきましょう。
ニラまんを作る
つづいて、ニラまんの作り方をご紹介します。
ニラまんの具を作る
材料は、ざっくり言えばニラひと束とひき肉300gだけ。
シンプルな材料で、ニラの風味を楽しむのが、ニラまんの醍醐味なのです。
まずは栃木県産のニラひと束をみじん切りにします。
ニラの一番下の部分は甘いので、捨てないようにしましょう。
ニラのみじん切り
輪ゴムで束ねてみじん切りにすると、束が固定されて効率的にみじん切りができますよ^^
ひき肉は、先に塩だけを加え、よく混ぜておきます。
最初に塩だけで練ることで、お肉がふっくらするのだそうです。先生曰く、中国の方がよくやっている方法なのだとか。
その後、ニラを加え、改めて手でよく混ぜていきます。大きめのニラひと束をみじん切りにすると結構な量ですが、混ぜこむと自然とまとまっていきます。
調味料を加えます。醤油・ガラスープの素・紹興酒、それにおろししょうが・ごま油・片栗粉。調味料の水分が多めに感じますが、良く混ぜれば、具全体がふっくらとしてきます。
16個分つくるので、肉まんと同じようにへらでおおよそ分けておきます。
ニラまんをつつむ
よくこねたニラまんの具を、大判の餃子の皮でつつんでいきます。
具を完全につつみ込むニラまんもありますが、今回は片側の具が半分見えているタイプ。大判の餃子の皮の真ん中に具をのせ、周りに花弁のようにひだをつけていきます。
ひだをひとつひとつ折り込んで、最後のひだは中に押し込む感じで固定します。
ひだは8枚前後つくりました。これはお好みですが、あまり細かいひだでなくてもOKです。
最後に、具の真ん中にクコの実をおきます。
飲茶でよくでてくる点心らしい姿になりました♪
ニラまんを焼く
ニラまんをごま油で焼き上げます。
まずは、具が出ている面を下向きに置いて焼き目をつけます。クコの実は焦げやすいので気を付けましょう。焦げやすいので、焼いてから後で上にのせてもOKです。
上の面は軽く焼き目をつけてください。
その後裏返したらお湯を入れ、フライパンに蓋をします。
水分がなくなるまで、しっかり蒸し焼きにします。
宇都宮市民なら熟知している(笑)、餃子を焼く手順とおおよそ同じです。
地産地消・本格中華点心を食す
蒸しあがった肉まんは、ふたまわり程大きくなり、きれいなアイボリー色に輝いています。
とじ目を軽くつまんだ部分は、蒸しあがるとふっくらとして、まるで小さな雪山のように美しいフォルム。
中を割ってみると、ふわ~っといい香りの湯気が立ち上ります。
食欲をそそられた勢いで、そのまま手に取って食べられるところも、点心の魅力。
中の具はしっとりとした口当たりで、濃いめの甘辛味。玉ねぎの甘みとごま油・醤油、そして和豚もちぶたの旨味が織りなす、何ともぜいたくな風味が、小ぶりな肉まん中にギュッと詰まっています。
もちもちの皮と一緒に一口食べると、スタッフの誰もが思わず「これはおいしい!」と口に出してしまったほど。
いつも食べている中華まんとは一線を画す「高級点心」といった味わいに仕上がりました。
味もさることながら、大きな違いを感じるのは、皮の食感。市販の中華まんの皮は、大きくてふわふわとした蒸しパンのような食感が多いのですが、薄目で密度があり、もちもちしています。
甘辛で濃厚味の具との取り合わせは、以前に食べたことがある神戸土産の「豚まん」を思い出しました。
それもそのはず。先生が、豚まんで有名な大阪の「551蓬莱」をイメージして考えたレシピだそうです。辛子醤油で食べるのもおすすめです。
続いてニラまんも味わいます。焼きあがったニラまんは、底の面に香ばしい焼き色がつきました。
できればこちらを見せて盛り付けたいところですが、ニラが見えるほうを上にして盛り付けます。
予想通りではありますが、ひとくち食べたとたん、香ばしいニラの風味が口いっぱいに広がります。
表面の焼き目がカリっと香ばしく、噛むほどに和豚もちぶたの肉汁の旨味が広がっていきます。
点心の魅力は、味はもちろんのこと、その形や具のバリエーション。今回和豚もちぶたで作った「地産地消」点心も、見ても食べても大満足の逸品になりました。
じつは今回の取材では、先生は肉まんとニラまんを同時進行で手早く作ってくれました。かかった時間は、正味1時間程度。手順も材料もシンプルなので、一度作ったらすぐ覚えてしまいます。
和豚もちぶた入り本格点心、ぜひ一度お試しくださいね。
分量のおさらい
肉まんの皮
- 強力粉・・・・・・・50g
- 薄力粉・・・・・・・150g
- ドライイースト・・・大さじ1/2 (5g)
- ベーキングパウダー・大さじ1/2 (5g)
- 砂糖・・・・・・・・30g
- サラダ油・・・・・・大さじ1/2
- 塩・・・・・・・・・少々
- ぬるま湯・・・・・・100ml
肉まんの具
- 豚ひき肉・・・・・・150g
- 玉ねぎ・・・・・・・1枚
- パン粉・・・・・・・大さじ1と1/2
- 中華スープの素・・・大さじ1/2 (8g)
- しょうゆ・・・・・・30g
- サラダ油・・・・・・大さじ1 (15g)
- ごま油・・・・・・・大さじ1/2 (5g)
- 砂糖・・・・・・・・大さじ1/2 (5g)
- 片栗粉・・・・・・・大さじ1/2 (5g)
ニラまん
- 豚ひき肉・・・・・・300g
- 塩・・・・・・・・・小さじ1/2
- にら・・・・・・・・1束
- あれば クコの実 30個程度
調味料
- しょうゆ・・・・・・大さじ1/2
- ガラスープの素・・・大さじ1/2
- 水・・・・・・・・・大さじ1
- 酒・・・・・・・・・大さじ1
- おろし生姜・・・・・適量
- ごま油・・・・・・・適量
- 片栗粉・・・・・・・大さじ1
- 餃子の皮(大判)・・・16枚