~ プロローグ ~
フレンチレストランのシェ イノセさんは、
釜井台通りを北上して、烏山信用金庫の交差点てまえ。
ヒイラギモクセイの生垣が見事ですぐにわかりました。
「食べること大好きウーマン」のライターNが訪問しました。
常連さんの集うカジュアルフレンチ「シェイノセ」
シェイノセさんには2年前の5月にも取材協力をいただきました。ライターNも気になっていたフレンチレストランでしたが、ランチも要予約ということで機会をのがしていたお店です。
ランチの予約って・・・!?オーナーシェフ猪瀬さんにお聞きしました。
お客さまに満足と悦びを、のポリシー。せっかく足を運んでくださるお客さまに、最善のお料理を、という思いからとのこと。
ちょっと特別なランチの日を予定する楽しみ方もいいですね。
ところで、フレンチはちょっと気取ったイメージがありませんか?
カジュアルな食事とはちがい、背筋をのばしていただくコース料理は近づきにくい気も。 ところが友人宅を訪れたように、うちとけた気分にさせてくれるレストランだったらどうですか?
調度品から食器までオーナーお気に入りの品にかこまれる中、この日はルレーブ百合のほんのりとした香りが室内をまとめあげていました。
目に入るもの、流れる曲、落ち着けるチェア・テーブルすべて。五感をめぐる環境からして、気持ちゆたかに「食する」ことを目指しているコンセプトを感じます。
手間ひまかけた料理に活きる和豚もちぶたの魅力
もちぶたロース肉の香草パン粉のせ焼き
「もちぶたロース肉の香草パン粉のせ焼き」は目の細かい香草パン粉(ペルシア―ド)をのせて香り高く焼いた料理で、ナイフがすっと入りこむ肉質はさすが!
豚のフォンドボーが添えられています。
脂身は苦手でしたが、この味は想定外。
むしろ脂身を味わうと言ってもいいかもしれません。
火が入りすぎると肉質を硬くするので、レアな焼き加減の心くばりも最上です。
煮込みハンバーグ
猪瀬シェフは「和豚もちぶた」のポテンシャルを強調されます。とくに味の良さと脂身の口どけとか。
その味をいかしたのが「煮込みハンバーグ」です。
牛肉に、もちぶたを加えると、ジューシーさも味の焦点もきわだってくるのだそうです。
自家製生ハムとパパイヤ
さて、生ハムのピンク色をご覧ください。
これは「和豚もちぶた」ならではの色味でして、その上やわらかい肉質と甘みの脂身が口の中で混じりあうのですから、手作り生ハムの威力はさすが。
パパイヤとの取り合わせ方にも唸りました。甘みの強いフルーツより、融合のしかたが断然ちがう。
じつに旨味の計算された生ハムでした。というのもハーブ塩水で仕込んだり、熟成をじっくりかけた手間ひま、愛情こめた扱い方が段違いのお味をもたらしているようです。
でもロースハム・生ハムの仕込みは一か月ちょっとかかる手間のかかる品。暮れの進物用に、お客様の要望から作られるようになったと、猪瀬シェフからうかがいましたが、そのためすぐに完売。
お値段は一般流通品に比べれば少し高価ですが、毎年予約されるお客様がたくさんおられ、惹きつけられてしまった舌とはこういうこと。
工程の写真をご覧になれば、手間と時間の逸品とおわかりいただけるでしょう。
「和豚もちぶた」は安全と美味をモットーに育成された豚肉です。安全の基本は飼料。素性のわからない飼料は一切不使用で、環境を配慮された育成豚のお肉の味がだんぜんちがう、と猪瀬シェフは言います。
関口肉店の流通方法にも秘密があり、真空パックしていません。気圧でドリップが出ないので旨味も逃げない。これが最大のポイント!
ハーブや生野菜の一部は猪瀬シェフのご実家の敷地で育てられた野菜で、めずらしい物もあります。
地産地消あらため、新造語〈地産地食〉は、土地の物を、土地で食す、理想的な食スタイルの実践だと思います。
知る人ぞ知る!?思いがけない特別料理
まずは豚カツ。この厚みにご注目あれ。300g以上の厚さがないと、この仕上がりになりません。
つまり、もちぶた本来の味が凝縮され、しっとりした食感も失わないで提供されるわけですね。
美しいピンク色が、目から食欲をさそうとともに、歓声をあげてしまいそうじゃありませんか。
ここに土鍋で炊いたご飯(鬼怒川沿岸地帯産)も用意されるとか。豚カツ好きには、たまりません・・・。
そしてスーパー級の裏メニューは特製らーめん!!
お客様を驚かすのも猪瀬シェフの楽しみなのですね。
時には手打ちそばも作られるというのですから、食の探求は半端ない。
特製らーめんは、お店のイベントで供されました。
60食限定のはずが、120食もオーダーされ、予想外の大人気だったそうです。
チャーシューの輝き方は写真だけで垂涎もの。
トッピングの様相もフレンチシェフならではのセンスが見てとれます。
今秋にはまた企画したいと猪瀬シェフの予告を聞いて、Facebookや店頭告知を見逃さないよう注目したいところです。
えらべるランチコース料理
ランチのコース料理は組合せ自由。 召し上がれる分量に応じて選ぶことができます。前菜と料理の一例を紹介しておきますね。
前菜
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カキのムニエールラタトゥイユ添え
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茹でたて東岡本産グリーンアスパラガス
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お魚のテリーヌとオニオンとベーコンのキッシュパイ
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田舎風豚肉のテリーヌとフォアグラのフォンダン
ちなみに、きょうは好みの前菜・メインの他、
香ばしさとモチモチ感たっぷりの自家製バタール、カブのポタージュ、目も喜ぶデザート盛り合わせを満喫しました。
このお値段でこれだけ「満腹口福」は久々です。
ディナーはおまかせが一番。
なぜならオーナーシェフ一押し、この日最高の材料を提供していただけるお料理がお得だからです。
食を支える料理人には、それ相応のオーラが輝いていることを感じた取材でした。
おいしいものを創る人のお顔は、やさしさがにじみ出ていて、それは食材を提供してくれる生産者への感謝と、食べる人への〈もてなす心〉に他なりません。
ひと皿に心をそそぐ猪瀬シェフ。その気さくなお人柄に触れたくて、次回の予定が早まりそうです。